氏名

林 愛子

記入日

2011年3月5日(土)

 

日本では考えられませんが、世界には、小学校に通えない子どもたちがたくさんがいます。学校が近くになかったり、子どもも働いているので学校に行けなかったり、制服やノートなどを買うお金がなかったり、理由は様々。世界中の子どもみんなが同じように小学校に行けるようにすること、ミレニアム開発目標2つ目、初等教育の完全普及の達成について、カンボジア、私の活動しているタオムでのことを書きたいと思います。

 

まず、カンボジアの現在の教育制度は、小学校6年、中学校3年、高校3年で、授業は無料です。各学年の最後に進級試験があり、その試験に合格しなければ進級できません。1年に2回の試験がありますが、中学3年生と高校3年生は3回の試験があります。この試験を受けるためにはお金が必要です。この試験を受けるためのお金というのもばらばらのようで、学年が上になればなるほど高くなり、また、今はできなくなったと聞きますが、普通より高く払えば、先生が手助けしてくれるのだとか?!さらに、補習授業(1科目500リエル程度、1ドル=4000リエル)を受けなければ、進級試験の問題など大事なことは、この補習授業で教えることがあるため、補習授業に通わなければ進級試験に合格することは難しいです。学力が追いつかないから、補習授業を受けられないから、進級試験に合格できない、試験を受けたくても受けるためのお金がないなどの理由から、留年は珍しくありません。また、タオムの学生に何年生?と聞くと、姉弟が同じ学年のことがよくあります。というのは、女の子を一人で学校に通わせるよりは、男の子と一緒に通わせるほうが安心だから、とか。ユネスコ統計研究所によるカンボジアの1524歳の識字率87.5%(2008年)を見ても、改善はされたようですが、やはり男子が89.4%に対し女子が85.5%と低いんです。15歳以上になるとさらに顕著で男子85.1%で女子70.9%です。他にもお金の問題などで、6歳になったらみんな小学校に入学するという感覚はなく、留年などもあって同じ学年でも年齢がばらばらです。

 

カンボジアの教師の給料はとても安く、説明したように授業終了後の補習授業で収入を得ています。教師だけでは食べていくことができず、タオムのように教師が農業に従事していれば、稲刈りの時期など忙しくて学校に来ないこともしばしばです。生徒も先生が貧しいことを理解しています。この現状をみんな理解しているのに、カンボジア政府は教師の給料を上げることが出来ないのはなぜなのでしょうか…?しかし、こんな現状にもかかわらず、私が出会ったプノンペンで大学に通う学生の中には村の子どもたちのために教師になりたいと言う子がいるのです!

 

学校はだいたい9月か10月に始まり、7月に終わります。4月のクメール正月、8月、9月のカンボジアのお盆が長期休暇となります。去年の夏、夏休みの間にタオムの青年の何人かはタイへ農作業、収穫などの仕事をするために出稼ぎに行きました。今までタイに出稼ぎに行って、不法労働のため警察に捕まった!とか、いろいろ聞いていたのでとても心配しました。1ヶ月ほどで帰ってくると言っていたけれど、顔を見るまで安心できませんでした。帰ってきたときには無事に何もなく帰ってきたことが嬉しかったです。このように1ヶ月と短期間ならまだしも、3ヶ月6ヶ月…と家族で出稼ぎに行くこともあり、出稼ぎに行くと前に習っていたことを忘れてしまい、帰ってきても学校の勉強についていけず、ドロップアウトするケースもあります。また、村には勉強したくても家の仕事を手伝うために学校に行けない子もいます。カンボジアでは子どもは家の手伝いに弟や妹の面倒をみて、家畜の世話をします。親にとって子どもは大切な労働力であり、タオムでも小学生低学年の小さい子どもが、またさらに小さい弟や妹の面倒を見ながら、薪から火を起こし、お米を炊いています。農作業も中高生になると見事にこなします。細い体の子たちのどこにこの体力があるのかと不思議に思うほど、稲刈りのときは稲を刈ったり運んだり、朝から夕方まで手をほとんど休めることなく、作業を続けます。その体力・精神力はどこから来るのでしょう?そんなたくましい子どもたちにやはり親は働き手として、勉強より仕事をすることを希望している親が多いのは事実です。

 

タオムには小学校が4年生までしかなく、5年生以上は他の村まで通わなければいけません。そのような6年生までしかない小学校はカンボジアにはたくさんあるとか…。日本では小学校といえば1〜6年生まで通えるのが普通ですが、カンボジアでは学校設備だけでなく教室自体がないこともあります。また、学校や教師不足から朝と昼の2部制をとっています。なので、実質勉強できるのは午前か午後の4時間程度です。中学校はさらに遠く、自転車がないと通うことが難しいです。そのためカンボジアでは小学校から中学校への進学率はがくんと落ちます。ユネスコ統計研究所によると、小学校89%(2008年)に対して中学22%(2002年)となっています。高校に至ってはタオムには自転車で通える範囲にありません。

 

そんな厳しい環境でも“学ぶことが楽しい♪”と頑張って学校へ通っている学生たちへ、世界中の人々からの支援金で、今まで学校に通うために必要な自転車や制服、ノートや鉛筆などの文房具を支援したり、中高生に奨学金の援助をしたりしてきました。また、短期間ではありますが、海外からボランティアさんが来て、村ではなかなか学ぶことのできないネイティブの英語を教えてくれたりもしました。そして、去年はタオムに幼稚園もでき、朝には子どもたちが手をつないでやってきます!しかし、今の幼稚園はセンターの下で吹きさらしの教室なので、先月から新しい幼稚園の建設が始まりました。ちなみにユネスコ統計研究所によるとカンボジアの幼稚園の就園率は13%(2008年)で、ほとんどは都市部に多く見られ村に幼稚園はあまりありません。

 

奨学金を支援している学生たちは、6名が車で1時間のSWAYにある高校に、9名が車で2時間のPOIPETDON BOSCOに、あとタオムから15キロほどのところにあるタックチョウ高校に通っている5名がいます。SWAYPOIPETの学生はみんな寮に入っていますが、タックチョウ高校へは村からバイクで通っているか、高校近くにある親戚あるいは知り合いの家から通っています。また、タオムの教会活動に参加している中学生も15名程います。

奨学金を支援している中高生に使い道を聞くと、文房具を買ったり、テストや補習授業を受けるために置いていたり、自転車の修理に使ったり…。他には高校生でコンピューターを習っているという子もいます。

 

み〜んなに教育の機会が与えられるようになるにはまだまだ長い道のりではありますが、タオムで幼稚園ができ、そこに手をつないで通ってくる子どもの笑顔、先生から習った歌をさっそくみんなで歌いながら通ってくる子どもたちの様子を見ると、長い道のりも少しずつで確実にはじめの一歩を踏み出し、進んで行っているような気がします。初等教育はもちろん、今までタオムにいなかった高校生たちが今、それぞれの場所で勉強に励んでおり、これから将来、大学に進んだり、それぞれの夢…看護師になりたい!や、通訳になりたい!などの夢に向かって勉強できたりすることが、日本では当たり前だと思っていたけど、本当にすごいことだな、とここで実感しています。私は世界中からの暖かい気持ちのこもった支援を、彼らに直接渡すことができない人たちに代わって渡すという重要な役割をもらい、彼らの笑顔やありがとう!を見て聞いて本当に幸せな気持ちになります。そんな世界とタオムの子たちをつなぐ役割ができることに感謝です。そして、彼らと関わることができて、その頑張っている様子を間近で見ることができて、彼らの一生懸命な姿に感動してしまいます。彼らに負けないように私も今、自分にできることを!世界中でミレニアム開発目標に向かって活動している中の小さな一人ですが、周りのみんなと一緒にこれからの活動にさらに励んでいきたいと思います。

 

 

 

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